静岡伝統工芸の新たな光、グッドデザイン賞受賞の照明「千空」
静岡市にある工芸体験施設「駿府の工房 匠宿」を運営する株式会社創造舎が、駿河竹千筋細工を利用した照明「千空」を発表。この商品は、国指定の伝統的工芸品である駿河竹千筋細工の繊細な技術を生かしつつ、モダンなライフスタイルに調和するデザインが高く評価され、グッドデザイン賞を受賞しました。
軽やかな竹の灯り
「千空」は、竹ひごを使って制作され、その特徴的で優雅な形状が魅力です。これまで花器や虫かごといった伝統的な「入れもの」を手がけてきた駿河竹千筋細工が、今回初めて「光の入れもの」として変貌を遂げました。見えない光源からの光が竹のひごに反射し、空間に広がる柔らかな光と影が、穏やかな温もりを演出します。
デザインは、インテリアデザイナーの五十嵐久枝氏が担当。彼女は「人々の生活の中で伝統を感じられるものづくり」を目指しており、「千空」はまさにその理念を体現しています。
モダンな機能性
また、「千空」は便利なタッチセンサー式スイッチが搭載されており、5段階の調光が可能です。シーンに応じた明るさを設定できるだけでなく、USB-C端子を通じてACアダプターやモバイルバッテリーからの電源供給が可能なため、コンセントのない場所でも安心して使用できます。
このように便利な機能が搭載されている一方で、製品としての美しさや工芸品の魅力も同時に追求されています。工芸に触れることで、現代人に新たな感覚や価値観を提供するのが狙いです。特に、この取り組みは日本国内外で駿河竹千筋細工の魅力を広める大きなステップになるでしょう。
匠宿と新たな取り組み
「駿府の工房 匠宿」は2021年に再構築され、「歴史と未来を結ぶ場所」として生まれ変わりました。地域の伝統工芸を体験できる工房や、地元の特産品を味わえるカフェなどが併設され、さまざまな文化が融合した空間となっています。
また、匠宿内には「工芸ノ宿 和楽」や「1HOTEL」といった宿泊施設も登場し、工芸体験をしながら過ごすことができます。今後も自分たちの歴史を大切にしつつ、未来の世代に伝えていくための取り組みが進められています。
職人とデザイナーの協働
このプロジェクトの背景には、地元職人の大村俊一氏の存在があります。彼は駿河竹千筋細工の伝承者であり、伝統工芸士として後継者育成にも力を入れています。一方、五十嵐氏は空間デザインを通じて日常的に使いたくなる製品を創造しています。彼らの協働によって、両者の技術が融合し、独自の価値を持った商品が完成したのです。
まとめ
「千空」は静岡の伝統工芸を現代のライフスタイルに取り入れた新たな試みとして、多くの人々に愛されることでしょう。このような工芸品が地域を超えて広がり、静岡の文化への理解が深まることを期待しています。これからもぜひ「駿府の工房 匠宿」を訪れ、実際に作品を手に取ってその魅力を感じてみてください。