宇宙での新たなリラクゼーション体験
静岡県富士市に本社を構える三生医薬株式会社は、自社が開発した「香るカプセル」を搭載したアイマスクが、日本の宇宙機関であるJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)の有償利用制度を通じ、国際宇宙ステーション(ISS)に持ち込まれることが決まりました。このアイマスクは、宇宙飛行士のパフォーマンス向上と地上での生活の質を高めることを目的にしており、2025年の夏ごろには日本人宇宙飛行士が実際に使用する予定です。
共同開発の背景と目的
この新しいアイマスクは、「Think Space Life アクセラレータ・プログラム2021」というプロジェクトの一環として、三生医薬のほかに株式会社ニトリ、株式会社IRiS Tokyoと連携して開発されました。この取り組みは、宇宙と地上の生活をより良くするための新たな価値創造を目指しています。
宇宙では、睡眠やリラックスが非常に重要である一方、宇宙飛行士は様々な課題に直面します。本プロジェクトは、香りと温もりにより新しい入眠体験を提供するものであり、宇宙環境におけるリラクゼーションを実現するために開発されました。
“香るカプセル”とは
アイマスクの中には、IRiS Tokyoが設計した天然精油のブレンドが封入された「香るカプセル」が装備されています。このカプセルは、三生医薬による高密封性のシームレスカプセルとして設計されており、香りを長期間保持することが可能です。使用者はカプセルを指で押すことで香りが広がり、森林の香りを楽しむことができます。さらに、ニトリが開発した吸湿発熱素材「N-ウォーム」が組み込まれており、香りと温もりが絶妙に調和することで、心地よい眠りへと導きます。
宇宙環境に適った製品開発
宇宙で使用する製品には、安全性や安定性、耐久性が極めて高いことが求められます。そのため、今回のアイマスクには、液体精油を安全に扱うための構造設計が必要でした。素材選定から製剤設計、安全審査までの段階を慎重に進めた結果、JAXAの制度のもとで初めて精油を封入したカプセルが宇宙で使用されることになりました。
この新しい試みは、地上と宇宙の双方の生活を豊かにし、新たな事業の創出につながると期待されています。
今後の展開と市販化
三生医薬は、今回の宇宙での経験を生かし、今後は地上での製品展開も計画しています。「香り」と「リラックス」をテーマにした新たなアイマスクの市販化に向けて、販売パートナーも探しているとのことです。また、香るカプセルの技術を利用した商品開発にも企業の問い合わせを歓迎しています。
プロジェクトのリーダーのコメント
三生医薬の研究開発本部新規用途開発部の福田部長は、「このプロジェクトは、宇宙環境で液体を安全に取り扱うための大きな挑戦でした。今後は、この技術を宇宙空間だけでなく、地上でも応用し、新たな価値を創出していきたい」と意気込みを語っています。
このプロジェクトは、ただのリラクゼーションアイマスクに留まらず、宇宙という未知の領域で新たな生活体験を提供する重要な一歩となります。今後の進展が待ち遠しい限りです。